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トレイルラン関係を中心に日々の出来事や思ったことを書き連ねて行きます。
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今回の屋久島行きのメインは1月1日、新年早々からの宮之浦岳を含む冬の屋久島山岳縦走である。荒川分かれ→淀川口登山口→花之江河→宮之浦岳→縄文杉→白谷雲水峡→宮之浦の町というロード10km、雪山トレイル15km、木道と岩のトレイル10km、ロード10kmの45kmコースである。予定通り3時半に起床し、荷物の最終確認を行う。ホテルのフロントで朝食用の弁当を受け取り4時半のバスに乗った。他に乗客はいなかったが、途中のバス停から最終的に10人くらい乗ってきた。とりあえず、荒川登山口から登り、縄文杉まで着いた時の時間を見て引き返すか宮之浦岳まで行くか考える、としか思っていなかったかが、荒川三叉路バス停に止まることが分かったので迷わず降車ボタンを押す。バスの運転手は押し間違いと思ったようだが、ヤクスギランド方面への分岐であることを確認し、間違いでないことを伝える。

バス下車が5時40分くらい、ここから縄文杉の起点となる荒川登山口方面ではなく、淀川登山口を目指して紀元杉方面へと向かう。ぐるっと回って荒川登山口に17時に戻るか無理そうなら白谷雲水峡を抜けて宮之浦へ、それだけを頭に進む。バスの降車ポイントからは2kmでヤクスギランドに到着。トイレを済ませ、ホテルでもらった弁当を食べる。まだまだここはウォーミングアップ、淀川登山口までは残り8kmの道のりである。身体も温まってきたということで、フリースを脱ぎ、薄着するとは思いつつもSkinsロングスリーブ、半袖Tシャツ、ゴアテックスパックライトジャケットという3枚だけ着た状態で出発。ひたすらロードを進むが、後半は積雪と凍結による滑り易くなっていた。7時45分過ぎくらいに淀川口登山口に到着。

宮之浦岳は5時間の登山コースという旨が書かれている。登山口から足元は既に完全に雪で覆われている。ここで買ったばかりのスノースパイクを装着するが、そもそも使った事がないのに実戦投入しているので付け方も適当で何度も外れることになる。雪には踏み跡がしっかりとついているし、MTBの轍もあり、コースを見失うようなことはない。雪に足を取られて速く進むことはできないが、花之江河に9時頃に到着してまあまあのペースである。ここはその名の通り、花が美しい湿原地帯らしいが積雪期には真っ白なので変哲もない雪原である。宮之浦岳登頂も11時過ぎくらいかと思っていた。樹林帯を抜け、笹が生い茂る屋久島の主稜線に出ると、積雪も多い上に、風も強くなりペースが一段と遅くなる。屋久島は花崗岩の島であるが、積雪が解けて露出した花崗岩の表面が凍ってる部分など、慎重に進まざるを得ない。ロープ場も多数あるが、ロープが凍っており冷たい。至る所で花崗岩の巨岩/奇岩があり、御在所岳や金峰山を思い出す。手袋をスキー用のものを持ってくるべきなのに、防水性もない普通の手袋だったのは失敗である。至る所にヤクシカがいて、笹薮の稜線では、シカも登山道を進むのでしばしば追いかけっこのような状況である。まさにバンビのように小柄なサイズがかわいい。奥多摩あたりのシカとは大違いである。宮之浦岳頂上に着いたのが12時半、想定外に時間がかかってしまった。ずっと雪に轍がついていたMTBにもここで追いついた。
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雪に足を取られる状況に嫌気が差していたので、反対側から来た人にどの辺りから積雪があったかを尋ねる。ユースホステルで泊まった際に同部屋の人がいった時点では縄文杉までは雪はあったけどほとんど踏むような所はなかったと聞いていた。しかし、縄文杉の登山道からずっと雪があったというような返答が帰ってくる。縄文杉を経て白谷雲水峡を抜けて宮之浦の町まで下りるという話しをしたら、当然ではあるが呆れられる。山と高原地図のコースタイムを元に新高塚小屋か高塚小屋に泊まることを強く促された。事実、花之江河から宮之浦岳の間は山と高原地図に書かれたタイムと同じかやや遅いかのペースである。登山口で花之江河が4km、宮之浦岳が8kmという標識を見たときには余裕だと思ったが、1時間に2km程度のペースでしか進んでいない。また、標識が設置された時代による違いなのか次のポイントまで2.6kmを見た後に2.8kmがあったりと進むべき距離が判然としないのも心のゆとりをなくさせる。
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宮之浦岳からは強風が吹き荒れる急斜面を下る。風が強く、雪も新雪サラサラのパウダースノーであるため踏み跡が消えてしまっており、登り返すことを考えると不安になるが、他に道は見当たらないのでそのまま進む。笹薮に入ると風がないため、また踏み跡がついている。永田岳と縄文杉の分岐になる鞍部のすぐ手前まで下った所でユースホステルで同じ部屋に泊まっていた人と出会う。この日、反対側から来る登山者に会った5人目であるが、高塚小屋に泊まって宮之浦岳を目指すという話しを聞いていたのでいつか出会うとは思いつつもようやくという感じである。先ほど道について尋ねた人とは違ってトレイルランニングをやっているということや、日帰りでぐるっと回るつもりであるということを飲みながら話していた事もあり、町まで下りるという話しについてもあっさりとしたもの。上り返しも大したことなくて、下り主体だからテキパキと進めるんじゃないか、という心強い意見がきて俄然元気が出る。
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花之江河からずっとここまでの稜線はガスっていたが、この辺りから時折雲が途切れて遠くまで見渡せるようになる。どうせなら宮之浦岳山頂で雄大な眺めを楽しみたかったが、いかんせん薄着で風が強い所に長く留まるのは自殺行為に他ならないため、仕方あるまい。高度が下がって来て再び樹林帯へと入ってくると樹氷の森が美しい。樹氷と緑の葉のコラボレーションはなかなか見れる場所がないだろう。新高塚小屋の所で2本持っていたペットボトルの1本目がなくなったが、水場に煮沸して飲んで下さいと書いてあるのを見て、水の消費ペースが遅くて助かったと思った。新高塚小屋を過ぎて、だんだんパウダースノーから湿り雪に変わって来て、足を取られる事も少なくなったのでスノースパイクはお役御免。何度も外れて上手くつけられないという根本的な問題はあったが、明らかにずぶずぶと沈む新雪の場所では役立った。森の中に日が差し込み雪はどんどん解けていて、暖かさすら感じる。高塚小屋もスルーしてようやく縄文杉に15時半前に到着。反対側から上って来た人にちょうど出会ったが、この時間には日帰り登山客は既に撤収しているので縄文杉をほぼ独占できる。
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縄文杉から先の道にも雪が残っていたが、解けてシャリシャリになっている。これが凍結すると急な階段など、非常に危険であるが、スパイク無しでも問題なく進める状況で幸運だった。木道が主なので、走ることはできないが、ここまでの道よりも明らかにスムーズに進む。過去に一度来た場所であるのでウィルソン株以外は基本的にスルーする。16時50分くらいにようやくトロッコ道に到着し、しばらく進むと完全に雪が消える。ずっと雪山を通って来たら今度は屋久島らしい青々とした森である。まだ冬至から10日程度しか経っていないのでこのくらいの時間には暗くなるだろうと思っていたが夕焼けで赤い空が見えている。完全に東京の時間で考えていたが、ここははるかに西の地、時差があるのだ。そして南でもあるので冬場の日照時間も比較すると長い。17時45分に楠川分れに到着、ここまで比較的開けたトロッコ道というおかげもあり、ライト無しで辿り着いた。
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さすがにここからは登山道へ入るのでライトを点灯、この前2日間で歩いた楠川歩道の続きの部分なので基本的には石が敷かれている。したがって石のある方に進めばいい。しかし、方向を見失いそうになる場所もあるので常に、赤テープを確認しながら進む。夜で視認性が悪いが、それでもかなりの数が張り巡らされているので見落とすようなことはなかった。太鼓岩の麓の辻峠まで上り基調の道だったがスムーズに到着。空も晴れ上がって来ているので太鼓岩からの眺めは素晴らしかろうと思ったが、ホテルに戻る時間が遅くなるので今回はスルーすることにした。辻峠から先はずっと下りが続く。岩中心のトレイルなので転ばぬように慎重に進む必要はあるが、ハイペースで進むことができる。縄文杉あたりまでは想定より1時間半近く遅れていたが、まさかの19時ジャストに白谷雲水峡入り口に到着。これは当初の想定通りである。楠川分れから70分で入り口に戻ることができた。白谷雲水峡のコースについて2日続けて歩いてかなり詳しくなっていたおかげでもあるだろう。

宮之浦の町までは車道を進む。当然の事ながら、トレイルを楠川に抜けるのは遭難の危険が高いということは分かっているため、夜に使う事はない。最初200メートル程度だけゆるやかな上りだが、以降はずっと下りのロードダウンヒル10km。空には満天の星が輝いている。前回屋久島に来たときに、永田いなか浜で海ガメの産卵を待つ間に見た星空を思い出す。はっきりと見える天の川に感動をしたものだ。今回の旅行では初日の夜から雲が出て来て、星空が見れない夜が続いていたが、最後に夜にすばらしいものが見れた。東京の冬の空では目立っているオリオン座が星々の中に埋もれてしまうぐらい多数の星が見える。途中からはライトを消して星明かりだけを頼りに進む。瀬戸内海直島の南寺のジェームズタレルの作品で、真っ暗な空間で15分くらい経つと見えてくるというアートがあったが、暗い中だからこそ感覚が研ぎすまされる。星明かりと眼下に見える町の灯り以外の光がない中で、山の稜線や路面のセンターラインがはっきりと見える。
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20時20分、ホテルに到着。45km(うちロード20km)、14時間40分と大幅に時間はかかってしまったが長い長い一日がようやく終わり。宮之浦岳の主稜線で下り始めるまでガスっていて展望が見れなかったのは唯一残念であるが、到着した夜から嵐が続いていたことを思えば、予定通りコースを回って無事に下りて来ることができた。天候の悪化もなく、積雪によるタイムロス以外はほぼ順調である。これは非常に幸運であり、感謝するしかない。この正月の間に北アルプスや富士山など、各所の雪山で遭難死者が出ている。旅に出る当日の朝に航空券を買ってから詰め込んだ荷物には夏に富士山に上る一般的な装備+α程度のものしかなく、ヒートテックやスキー用ソックス等の保温系インナーを忘れ、スキーグラブもなく、濡れた手や足が凍傷とは無縁だったのは偶然にすぎない。無論、状況を見て場合によってはすぐに引き返すつもりだったが、天候の急変時にどこまで対応できたかは自信がない。したがって今回大丈夫だったから次も大丈夫という保証はどこにもないし、次回はもう少し装備は揃えておくべきと猛省している。山は自己責任、だから装備不十分で命を落とすも自己責任という軽卒な考えがあるが、事故が起きた際に捜索/救助を行う人を始めとして、多大な迷惑をかけることになり、自分で責任を取りきれるようなものではない。安全に帰ってくる事、それが登山する者の責務である。雪山、奇岩、ヤクシカ、樹氷、縄文杉、照葉樹林、滝、満天の星空、、、ぜいたく過ぎる一日だった。
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